大蜘蛛伝説
  • Spider Tale

「大蜘蛛伝説」(2018)

ウランガラス、ワイヤー、ブラックライト

3.6m x 3.8m x 2.3m

岡山と鳥取の県境にある人形峠には、その地で1950年代にウラン鉱山の開発が始まる遙か以前から「巨大蜘蛛」が人を襲うという伝承が存在していた。本作品は、その話に基づいて制作された。

「巨大蜘蛛」説:峠にはかつて巨大な蜘蛛がいて、峠を越えようとする旅人を捕食していた。あるとき、これを退治しようとするものがおり、藁人形の囮を用意し、これを峠に設置すると、大蜘蛛が囮に襲いかかった。その隙に大蜘蛛を弓矢で射殺し、見事に退治することができた。以来、この峠を「人形峠」と呼ぶようになった。(ウィキペディア人形峠より)

一方、オーストラリア北部アーネムランド(原住民居住区)にあるナバレックウラン鉱付近にも類似した原住民アボリジニの伝承(ドリーミング)があり、我々の前作「What the Birds Knew (2012)」は、その「緑蟻ドリーミング」に基づいて制作された。

Gabo Djang (Green Ant Dreaming)」: その大地を掘り起こすならば、地中からたちまちのうちに巨大な緑蟻が現れ、世界を踏みつぶし破壊してしまうだろう。

70年代、このドリーミングを信じる原住民の反対を押し切り掘削されたウランは日本にも輸出され、福島第一原子力発電所で燃料として使われた。

「巨大蜘蛛」に対して「巨大蟻」という極めて類似性の高い伝承が、いずれもオーストラリアと日本のウラン鉱床付近に存在するという点は、注目に値する。これを単なる偶然と片付けられないかもしれない。オーストラリア原住民のソングライン「歌の道のり」という歴史認識では、祖先、先祖の神々、ドリーミングなどのルーツは、方角的に海を超え日本方面(正確にはアイヌ)から来たと考えられているからだ。この大蜘蛛伝説は、縄文以前本州各地に居住していたとされるアイヌ伝承であった可能性もあると言われる。

オーストラリアのドリーミングは、倫理、知識あるいは、人々に規律を与える「法律」のようなものと認識されているが、日本の古い伝承などもそれと同等なものであったと思われる。ちなみに、アフリカやカリブにも「アナンシ」と呼ばれる蜘蛛に関する神話があり、叡智のメタファーと認識されている。

巨大な蟻や蜘蛛が人を襲い、世界を破壊するという伝承は、まるで怪物のような危険性を孕んだ物質「ウラン」のメタファーであり、それを利用しようとする者への警告であったのではなかろうか。それはまた現在から振り返ってみれば、アボリジニや日本の先住民族の予言とも言えるのではないだろうか。